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空想垂れ流し 21.襲撃と休日と(e)

21.襲撃と休日と(e)

「シンっていつも何してるの?」
 肩が近づく。赤面するシン。同じく赤面しているフェスラ。恋愛にそれなりに慣れているという
印象を受ける。その癖それが嫌味に写らないのは彼女の態度がそうさせるのだろうか。
「え?あ、いや、勉強とか事務とか・・・・・」
 いつもとまるで違う雰囲気。シンの言葉がたどたどしい。いつものようなふてぶてしさが無い。
いつもならば、淡々と言うと言うのに。
 スバルとティアナはそれを見ながら笑いをかみ堪えていた。。
 どうやら目前の少女―――フェスラはシンのことを気に言ったらしい。それも異性として。
 再三繰り返されるアプローチをシンは必死に避けている。時折、ティアナとスバルに目で合図を送るも、
二人はニヤニヤしながらそれを放っておいた。
 6課内においてあれほど露骨なアプローチ―――ギンガとフェイトからのアプローチを受けていながら、
それに気づくこともない最高の朴念仁がこれほどまでに慌てている。それどころか意識しまくっているその姿があまりにも新鮮で面白いからだ。
 別にギンガとフェイトの恋路を邪魔する気などはさらさら無い。
 だが、逆にそれを手伝おうと言う気も無い。不干渉。二人のスタンスはそれだ。
「だから、仕事じゃなくて普段のことよ!遊びにとか行かないの?」
「いや、俺は・・・・」
「アンタ、仕事馬鹿だもんねえ。」
 にやりと笑いながら追加で注文したアイスコーヒーを啜るティアナ。
「あはは、シン君って放っておくといつまでも仕事してるしね。」
 こちらは追加注文したクリームソーダのアイスを崩しながら頬張るスバル。愛していると言う言葉通りに確かにアイス以外には目もくれない。ソーダは調味料とのこと。
 機動6課。管理局内部でも異端とも言える部隊。そこには当然守秘義務と言うモノが存在する。現在、彼らは会社の同僚で、今日は3人ともが非番なので遊びに来たというものだった。無論その会社名もダミー会社の物である。
 その過程で聞いた事。フェスラはこの近辺で働いているフリーター。親元を離れて上京してきたこと。魔法は使えない。
 無論、あちらの世界―――シンの生まれた世界とは何の関係も無い人間だ。ステラに似ているのは偶然と思うしかなかった。そして、現在シンの胸にはもう一つの驚愕があった――その驚愕があるが故に彼はしどろもどろにならざるを得なかった。
 似ているのだ。その雰囲気。話し方。口調。その他様々な動作や所作に至るまで、その全てがシンの記憶の中のある女性に。
 ルナマリア・ホーク。一時シンと互いに溺れあった女性。忘れたい傷跡。忘れられない傷跡。
 偶然だ。それこそ、よくある話だ。だが、そう思っても彼女の動作の一つ一つがシンの傷に触れる。その言葉や動作の全てが、彼女を思い出させるのだ。
 未練は無い。あれば2年間の間、一度くらいは連絡を取ろうとしたはずだ。少なくとも思い出を振り返ったりはするはずだ。だが、自分は一度もそんなことをしなかった。思い出を振り返ることなど忘れていた。
 それゆえにフェスラ・リコルディ―――彼女は厄介な人物だった。ルナマリアのような仕草。ステラのような見た目。
 それはシンにとっては苦い記憶を詰めた火薬箱。
 何も考えることが無く、ソレゆえに波打つ事の無い平面だった彼の心象を乱す暴風そのもの。
「ん?どうしたの、シン?」
「あ、いや、何でもない。」
 思わずどきっとする。その仕草に。彼女がいつもしていたように髪をかきあげる仕草。それが彼女をどうしても想起させる。今更の話だ。思い出したところでどうにもならない。どうにもしようと思わない。
 だが、波打つ心は収まる様子を見せない。
 守れなかった少女と守るべきだった少女に近似した女性。そこに恋愛感情は無い。会ってまだ数時間も経っていない。そんな感情を持つほどシン・アスカの心は潤っていない。
 今、彼の心に渦巻く感情は罪悪感と後悔の二つ。即ち守れなかった後悔と守らなかった罪悪感。
 周囲の皆は勘違いしているが、シンの心に在るのは周りが思っているような明るい気持ちではない。ただただ申し訳無さだけがそこにある。上手く話せないのは当たり前だ。彼にとっての罪の象徴と罰の象徴の二人がそこにいる。
 正視できる訳が無い。出来るなら、今すぐにでも土下座して、謝りたい気分だ。
 そして、そんな憂いの表情を見つめる二つの視線があった。超至近距離。気づかれないのが不思議なほどの超至近距離である。
 ―――ギンガ・ナカジマ。往年の刑事のようにコーヒーを啜りながらシンのその様子を見つめる。
 ―――フェイト・T・ハラオウン。優雅に上品にケーキを食べながらシンのその様子を見つめる。
 服装はトレンチコート。サングラス。そして、大仰に広げられた新聞紙―――穴の空いた。
 怪しさ抜群。捕まえてください。そういった風体である。
 けれど、シン達は今もソレに気づいていない。気づかないのは道理だ。彼女達はシン達がそちらを見た瞬間は必ず新聞紙で顔を隠すことを徹底しているからだ。どんなに怪しいとしてもそこまで徹底するなら誰も気に止めない。無論、これは彼女達の卓越した戦闘技術があるからこそ、である。
 シンの動きの一挙手一投足から目を離さず、その動きに合わせて行動するギンガ。つまり、シンが彼女達に近づく一瞬前には彼女はそこにいない。既にトイレや売店に移動しているのだ。それもごく自然に。
 同じくシンの動きに合わせて行動するフェイト。こちらはシンが動いてからの行動になる。だが、シンが彼女の方を見れば既にそこにはいない。何故なら高速行動―――ブリッツアクションによって視界外へ移動しているからだ。
 ―――そんな技術を使ってまで、追跡しようとするならもう少し見た目を気にするべきではないのか、という気もするが、さもありなん。猪突猛進する人間がそんなことを気にするはずが無い。
「赤くなっちゃって。もしかして、照れてるの?」
 フェスラが再びシンに近づく。シンの頬が赤面する。膨れ上がる嫉妬の炎。帯電する空気。吹き荒れる疾風。
「へ?あ、ち、違う。そういうのじゃ・・・・」
 思わず後ずさるシン。それを追いかけるようにしてフェスラがシンに近づいていく。
 押しとどめようと彼女の肩を両手でシンは押しながら呟く。
「い、いや、フェスラさん、アンタ、何する気なんだ!?」
「シンをからかってるの♪」
 満面の笑みでそう朗らかに話すフェスラ。
 完全な開き直り。フェスラは嫌がるシンなど意に介さずにそのまま近づく。ティアナ達はニヤニヤしながらそれを眺めている。物珍しそうに。シンがこんな風にうろたえるのは本当に珍しいからだ。
「そ、そんなことを開き直るな!!ティアナ、スバル!!見てないで何とかしてくれ!!」
 殆ど泣きそうな声でシンは二人に助けを求める。元々こういった女性に迫られると言う状況が大の苦手なのだ。
「諦めなさい。今日はそういう日なのよ。」
 しれっと新しい玩具を見つけたような子供のような顔でティアナは応えた。
「あ、あははは・・・・」 
 苦笑するスバル。だが、その顔はティアナと同じような顔。つまりスバルも現状のシンのうろたえ具合を楽しんでいるのだ。
「いや、だから止めろよ、二人とも!!鬼かお前らは!!」
 そんなシンの叫びを意に介さず、スバルとティアナの二人は「ねえ?」「うん!」とアイコンタクト。まだまだ、遊び倒すまではシンをフェスラから助ける気はさらさら無いらしい。
(こいつら、最悪だ!!)
 シンが心中で叫ぶ。それを表に出せば余計酷いことになると言う確信があったので口には出さない。
 そんなやり取りの中、フェスラが不満げに呟く。
「シンって酷いわね、こんなに可愛い子がなけなしの勇気出して迫ってるって言うのに。」
「自分で言うな!!ていうか、何で迫る必要があるんだよ!?そんななけなしの勇気はいらないから!有効利用の方法違うから!!」
「いいじゃない、面白そうだし。さ、それじゃ観念しなさいね、シン?」
(アホかああああ!!!)
 心の内でのみ絶叫。素面でこれと言うなら酔っ払いよりも余程性質が悪い。
 シンとてフェスラのこの態度が冗談だとは分かっている。出会ってまだ間もないのにこんなことをするようなことは無い。
 単純にノリのいい女性なのだろう。だから、本当なら無視すればよかったのだ。
 そうすれば飽きた彼女はいつしかこの場を去っていったに違いない。
 だが、思いの外シンは反応してしまった。いつもなら決して反応せずに無視するか、既にこの場を去っているであろうに。
 何故か?簡単なことだ。前述したフェスラ・リコルディへ抱く罪悪感と後悔がシンをこの場に留めているのだ。
 精神的にフェスラに対してシンは下手に出てしまう。
 彼女にとっては全く関係の無いシン自身が彼女に勝手に抱いてしまう負い目。よってフェスラがどう思っていようと彼女の言うことに対してはよほどおかしなこと―――命がかかっているという状況ででも無い限り、イエスとシンは答えるだろう。
 故にこんな滅茶苦茶にからかわれてもシンは助けを求める以外に何もしないのだ。負い目が拒絶に手を掛けさせないのだ。
「じゃ、次は・・・・って、誰?」
 訝しげなフェスラの言葉。その視線の先を追いかけて、シンもそちらに振り向く。同じくティアナとスバルも。
「・・・・・古来より女性は奥ゆかしさや慎みというものを念頭に男性を踏破してきました。」
 声が聞こえる。よく慣れ親しんだ声。
 服装はまるで似合っていないトレンチコートと右手に持った新聞紙。小さな顔に不釣合いなほどに大きいサングラスが顔を隠す。特徴と言えばその長い髪。青く長い髪。
 怪しいなどと言うものではない。今時、こんな格好など探偵でもする事はないだろう。
「ヤマトナデシコという言葉が現れるほどそれは顕著なものです。つまり、奥ゆかしさや慎みというものは色気と同一だと言うことです。それが何ですか、その姿は?」
 びしっとフェスラに向かって人差し指を向ける。その先に在るフェスラの姿。上半身はキャミソール。下半身は丈の短いひらひらしたスカート。肌は露に―――露出度高めである。
「人前でそんなハレンチなことをするとか少しは考えなさい!!女性ならもう少しは慎みというか恥じらいと言うかそう言うものを持って、男性に接する。これが基本でしょう!!」
 そして、いつの間にかその隣に腕を組みながら「うんうん」と頷きながら立つもう一人の人物。先ほどの人物と同じような格好。違うと言えばトレンチコートを押し上げるミサイルのように突き出した胸と輝く長い金髪。
 ティアナの唇が釣りあがる。苦笑しようとして出来なかった。予想外と言うか、まさかやりはしないだろうと思ったことをやりやがった二人を見て。
 スバルも同じく、苦笑。ただ、こちらはティアナほどのショックを受けてはいない。
 もしかしたらと思っていたのだ―――まさか、本当にするとは思わなかったが。
 フェスラは何が何だか分かっていない。然りだ。直ぐに顔を赤くする純朴な青年をからかっていたら、突然現れた変質者みたいな二人組みに説教されているのだ。理解するほうが難しい。
 そして、シン。彼は呆然としていた。二人の口から紡がれた言葉。その声がどう考えても彼の知る声にしか聞こえなかったからだ。
「・・・・・・ギンガさんとフェイトさん?」
 その一言に彼の目前に佇む二人が一斉に後ずさる。
「ち、違います!私はそんなギンガなんていう女性では・・・・」
「わ、私もそんなフェイトなんていう人じゃないんだけど・・・・」
「ていっ」
 シンの両手が伸びる。不意打ち。二人のサングラスが取り外される。
 露になる素顔。ギンガ・ナカジマ。フェイト・T・ハラオウン。
「・・・・どっからどう見てもギンガさんとフェイトさんじゃないですか。」
 シンの瞳が細まる。口が開き、頬が引きつる。怒っている、と言うよりも呆れている顔。
「・・・・あんたら、一体何してるんだ」
 その瞳の前で俯く二人。流石に仕事中に来ていることがばれたので後ろめたいのだろう。
「・・・・二人とも仕事は?」
 ティアナの声。少し震えている。恐らく二人のやっていることの馬鹿さ加減に堪忍袋の緒が切れそうになっているのかもしれない。
「ギン姉・・・・・もしかして」
 スバルの呟き。その言葉に被せるようにして、二人が同時に言葉を話す。
「え、あーいや、私は別に・・・・ヴァ、ヴァイスさんが仕事代わってくれるって言ったので。」
「わ、私はシグナムがたまには仕事させてくれって懇願されて仕方なくここに・・・・」
 胡散臭い。あまりにも胡散臭い言葉だった。

「・・・・それで何でここに来たんですか?」
 ジト目で二人を見つめるシン。その視線は睨み付けると言うほどに険しくもないが。
「そ、それは・・・・・」
 言いよどむギンガ。
 正直に話せば、恐らくシンの視線は今よりもはるかに険しくなる事は間違いない。それに大切なイベント、と言うか想いの告白無しには正直に言うことも出来ない。
 周囲にはシンとティアナとスバルとフェイト。
 そして見たことも無い女性―――しかも、美人でその上、シンは彼女を非常に意識している。
 何しに此処に来たか。その理由。そんなもの言えるはずも無い。意識するシンを見てたら、どうしようもなくなってこの場に現れました、などと。
 シンの朱い瞳がこちらを貫く。
 その視線を受けて、ギンガが萎縮する。隣を見ればフェイトも同じように萎縮している。
 言えない。シンに気持ちを知られたくない―――今はまだ。その気持ちが二人の共通事項。
「え、えっと・・・・」
 それでも何か言わなければならない。ギンガが口を開く―――瞬間、それを遮るようにして、フェイトが口を開いた。
「ふ、不純異性交遊してないか確かめに来たの!」
 びしっとシンとフェスラに人差し指を突きつける。ギンガの目が輝く。「それがあったか!」とでも言いたげな輝き。
「そう、それ!」
 その言葉に便乗するギンガ。
「そ、それで来てみたらこんなことになってたんです!」
「だから、思わず止めに入ったんだよ!?」
 流れるような二人の弁明。身振り手振りを使って大仰に弁明するその姿。
 もう、どこから突っ込んでいいのか分からない。恐らくはその見た目に始まり殆ど全てに対してツッコミを入れるべきなのだろうが。
 だが、シンはツッコむことなく、一つ溜め息。
「・・・・・・まあ、いいですけど。」
 正直なところ、内心、シンは安堵していた。あのままフェスラに迫られたり、からかわれ続けていれば正直なところ自分を保てたかどうかは分からないからだ。
 保てた、と言うのは別に性欲を持て余したと言う意味ではない。単純な話、あのままいたら、自分の中の罪悪感に耐え切れずに土下座して、謝っていただろうからだ。
 そのことに内心でほっと息を吐く。
 その時、不意に、左腕に暖かな膨らみ―――柔らかかった―――を感じる。思わずそちらを振り向く。
 そこにはステラに似た少女―――フェスラ・リコルディがシンの腕を抱き締めるようにして佇んでいた。
「フェ、フェスラ!?」
 驚くシンを無視して、フェスラはそのままギンガとフェイトに顔を向けると言い放つ。挑発的に。
「ねえ、ギンガさんとフェイトさん、だっけ?」
「・・・はい?」
「・・・なに?」
 剣呑な眼光を隠そうともしない二人。標的からの言葉。剣呑となるには十分だ。
「貴女たち二人って・・・・シンの恋人?」
 放たれた言葉は矢の如く。二人に突き刺さる。ついでにシンにも突き刺さる。
 彼にとっては寝耳に水の事柄だ―――少なくともそう思っている事柄だ。
「は!?あ、アンタ、何馬鹿なこと言ってるんだ!?」
「シンは黙ってて。」
「く・・・・」
 睨み付けられ、押し黙るシン。基本的に女の言うことには弱い。特に彼女のようにシンの傷口をつつきまわすような女性には。
「どうなの?」
「・・・・・ち、違いますけど。」
「・・・うん、違うね。」
 フェスラの視線から眼を逸らす二人。本心では、肯定したいがシンやティアナ、スバルの手前それを言い出せないでいる。
「じゃあ、シンってフリーなんだよね?」
 その言葉を聞いてフェスラがニッコリと笑い、シンに向かって口を開いた。
「あのな、フリーとかフリーじゃないとかじゃなくてだな!!俺は別にそういうのには興味が・・・・」
「ゲイじゃないんでしょ?」
 ありえない質問。
「当然だ!!」
 一拍も置くことなく否定するシン。そのやり取りでフェスラはニヤリと唇を吊り上げ、微笑みを邪悪なものへと変化させる。
「じゃ、チャンスありって思ってもいいのかな?」
「チャ、チャンス!?」
 うろたえるシン。赤面する頬。
 それを確認して、フェスラはチラリと視線を横にやる。視線の先にはギンガとフェイト。二人の乙女。
 挑発的なフェスラの視線。
 ギンガとフェイトの瞳が、フェスラを射抜く様に鋭くなる。瞳に炎が燃え上がる。嫉妬と言う名の炎が。
「・・・・へえ。」
「ふうん・・・・。」
「別にからかうだけのつもりだったけど、シンって思ったより可愛いしね♪」
 ギシリ。帯電し、硬直し、固まり、停滞していく空気。比喩でも誇張でもなく、空気が痛い。
 皮膚に静電気が走ったような錯覚―――恐らく錯覚ではないだろうが。肌が粟立つ。背筋を走る怖気すら伴う恐怖。
(や、やばい)
 心中での呟き。自分が落とし穴に落ちたのだと言う感覚を覚える。
 ティアナ・ランスターはこの場に至ってようやく理解した。自分が踏み出した場所。そこは文字通り虎穴。つまり、危険区域そのものだと言う事を。
 彼女とて機動6課の一員である。潜り抜けた修羅場の数と質は他の魔導師に比べてはるかに多い。潜り抜けた修羅場は戦闘経験として彼女の中に蓄積されている。
 その戦闘経験が呟く。これは危険だ、と。
 ギンガとフェイトの織り成す危険な空気。触れれば消し飛ぶと言われても信じてしまいそうなその嫉妬。触れずともその嫉妬だけで眼前の敵―――この場合はフェスラ―――を吹き飛ばせるのではないのかと勘違いしてしまいそうなほどに。
 空気が帯電する。空気が疾風する。ギンガの青い瞳。フェイトの赤い瞳。そしてフェスラの赤紫の瞳。三つの瞳が交錯する。
 その中心でシンだけがフェスラの態度にうろたえながらも、気を取り直すようにコーヒーを飲んでいる。
 ギンガとフェイトのことは気にしていないようだった。
 凄まじい朴念仁。いわんや、その朴念仁があればこそ彼はこの場の空気に耐えれているのかもしれない。ヴァイスが言った言葉。「羨ましいに決まってんだろ!」。
 馬鹿な話だ。羨ましい。その言葉は知らないからこそ言えるのだ。知っていれば、この空気を一度でも味わったことがあるなら羨ましいなどと言えるはずがない。少なくとも自分はあんな状況になりたくはない。
 猛獣。それが彼女達二人を形容する最も適当な言葉だ。そして、その隣でスバルも同じように現状を捉えていた。つまりは虎穴にいることを。しかも別に彼女達は虎子―――この場合はシンである――が欲しいと言う訳でも無い。要するにハイリスクノーリターンである。
 危機感を感じる。このまま、ここにいれば、とんでもないことになってしまうのではないのか、と。
 いや、連れ出した時点で既にそれは確定かもしれない。猛獣を檻から解き放ったのは他でもない自分たちだからだ。
 そしてどうするべきか、と二人が思い悩んでいた時―――ちなみに二人が考えていたのはこの場からの脱出方法である。互いのデバイスを用いて、とりあえず連絡付きそうな人に片っ端から連絡。そして、さも連絡が入ったように通話して、この場から退却する。高速で方々に通信を繰り返し続けるマッハキャリバーとクロスミラージュ。多くの金と時間をかけて作られた最新型AIである彼らもまさかこんな使い方をされるとは思わなかっただろう―――声がした。
「言ったはずですよね?不純異性交遊は駄目だと。」
 先手。ギンガ・ナカジマの一言。傍らでフェイトも同じくうんうんと頷いている。
 シンは相変わらず「ま、まあまあ」と愛想笑いを浮かべながらコーヒーを飲んでいた。その表情を見るに、どうして彼女達が険悪になっているのか理解出来ていない。
「・・・・そんなのシンと私の勝手でしょ?ねえ、シン?」
 後手。フェスラの言い分。彼女の瞳が妖しく揺れる。その瞳に見つめられるとシンは何も言えない。罪悪感が彼女の肯定に手を貸す。
「あ、いや・・・・・まあ、確かに勝手・・・」
「へえ。」
「ふうん。」
 言葉と共にギロリ、と血走った青と赤の瞳が射抜く。
 瞬間、肌が粟立った。本能が警告する。それは死亡フラグだと。決して選んではならない選択肢だと。
「・・・・じゃないですよね?あ、あはははは」
 肯定を言い放つ寸前で否定に変更。愛想笑いで誤魔化しに入る。幸運好色(ラッキースケベ)の称号は伊達ではない。
 シン自身どうしてそこで変更したのかは分からないが、変更しなければきっとロクな目に合わない。
 そう、理性ではなく本能が察知していた。
(・・・な、何で今日に限ってこんなに二人ともブチ切れてるんだ?)
 シンにはその理由が本当に分からない。何故なら彼にとって彼女達が自分に好意―――それも異性への好意を持っていると言う事柄が理解の外側にあるからだ。
 シン・アスカ。彼は朴念仁である。そして大抵の朴念仁がそうであるように彼も自分が異性の興味を引くような人間ではないと思っている。
 いつもやっていることと言えば訓練ばかり。13の時に家族を失ってからやってきたことと言えば軍での訓練や教習や座学、そして数え切れないほどの実戦。それはこの世界にやってきてからも殆ど変わりはしない。故に同年代の同性が行うようなコトなど知識として知ってはいても殆ど知らないに等しい。
 客観的に見てこれほど偏った人間もそうはいない。面白みの無さにかけては折り紙つきだ。少なくとも自分ではそう確信している。だから、自ずから自分に関わってくる機動6課のメンバーは物好きでお人好しで気のいい奴らだと、考えていた。
 その中でも特に自分のことを気にかけてくれて関わろうとしてくれるギンガやフェイトに対しては感謝の念すら抱いていた。
 “だから”その理由が分からない。どうしてギンガとフェイトがブチ切れているのか。彼女達がどうしてここに来たのか。
 自分に向けられた好意に対して鈍感どころか無感なのだ。分かる訳が無い。分かるはずが無い。
「ほら、シンも嫌がってるじゃないですか。ねえ?」
「うん・・・・嫌がってるよね。」
 誰もそんなことは言ってない。凄まじい自己解釈である。
「へえ・・・そうなんだ?そうなの、シン?」
 フェスラの問い。シンに向かって顔を向ける。
「あ、い、いや・・・・・」
 言い淀み、うろたえるシン。いつものような無関心はそこにはどこにもなかった。そこにいたのは女性に迫られうろたえる年相応の年齢の反応。
 ティアナは3人の様子に怯えながら彼のそんな様子をつぶさに観察していた。
 いつも自分が見ていたイメージとは違うシン・アスカを。
(・・・・こいつ、本当はこんな奴なんだ。)
 心中で呟く。言葉の通りだ。ティアナにとってシンとはどこか危うい劇物だった。その上6課内に嵐を巻き込んだ張本人。
 無愛想で無関心。他人にはあまり関わりたくない―――と言うよりも線を引く人間だと。
 だが、その内面は何の事はない。年相応、もしかしたら実際の年齢よりも幼く見えるような人間だった。実際、今眼前にいるシンはティアナと同年齢くらいに見える。とても彼女やギンガよりも年上とは思えない。単純な話、不器用な人間なのだ。そして、不器用だからこそ無茶をする。視野狭窄に陥って。ギンガやフェイトの思いに気づかないのも無理はない。彼には周りなど見えていないのだから。
 ティアナが今回、彼を連れ出したのは孤立しがちな彼を孤立させない為だった。何よりもギンガやフェイトと言う二人とだけ親密な関係を作ってしまっている彼の歪な人間関係を正したかったからだ。
 だが、そんな必要は無い。彼は別にギンガやフェイトと親密な関係など作ってはいない。
 今の彼の態度を見れば分かる。恐らく、そんな二股をするような甲斐性など彼には一切存在しない。恐らく、誰かを振ることですら彼には無理だろう。女性にからかわれたくらいであそこまでうろたえるのだ。ギンガとフェイトの二人の思いに気づけばあんな態度を取れるはずが無い。
 単なる朴念仁なのだ。そういった人間の人間関係を是正する方法―――そんなもの一つしかない。
 こちらから関わるコト。気にかけるコト。それだけだ。
 今はギンガとフェイトが関わっている。別に彼女達と同じように関わらずとも、友達として接すればそれでいい。
 彼はそういった人間の言葉を無碍には扱わないだろうし、そういった立場からなら彼のオーバーワークを止める―――ことは出来ないにしても軽減することは確実に可能だ。そうして、ティアナはこれからの自分の立ち位置を考えると、溜め息を吐きながら苦笑し―――そして、現状を思い出し、顔を青くした。
 視線を上げる。互いに交差し、睨み付ける視線。帯電したままの空気。爆ぜる嫉妬の炎。
 その最中でうろたえたままのシン。スバルは現実逃避に入ったのか、アイスをモリモリと食っている。
(・・・・・どうしよう。)
 どうするもこうするも無い。先ほどから行っている通信は全て失敗。当然と言えば当然だ。今は誰もが勤務時間。別の課からの同期からの通信に暢気に応対出切るほど楽な仕事ではないのだ、皆。逃避の方法はこれで終わりだ。
 思考を切り替える。ならば、どうする。妥協案。逃げる方法が見つからないなら、せめて場所を変えて空気くらいは変えたい。そして、再度逃げたい。いや、ホントに。マジで怖いんです。
(シンは当てにならない、スバルはアイス食べてる、ギンガさんとフェイトさんは触れてはいけない、フェスラは・・・・何をしてくるかがまるで読めない。・・・・・ああ、本当にどうしよう?)
 折角の休日にどうしてこんな目に遭うのだろうか。
 そうして、ティアナが諦観の境地に至りそうになった時―――ぐぅっと音がした。
 皆が言葉を終えて周囲を見る。赤面するギンガ。ギンガのお腹が鳴ったのだ―――つまり、それは空腹。考えてみればシンとティアナとスバルは朝食を終えて直ぐに来た。ギンガとフェイトは何事か言い争っていたはず―――その間に連れ出してきたのだから。その間、二人がシンを探していたのだとしたら、彼女たちは朝から何も食べていないと言うことになる。
 罰が悪そうに赤面するギンガ。それを見て、ティアナの背筋に電流が走る。閃きという名のその電流は彼女の口を淀みなく動かし始める。この状況からの脱出の方策―――は無理ではあるが、変革の方策を。
「・・・・ねえ、皆お腹空かない?」
 一つ目の言葉。その言葉に皆がギンガに向けていた視線をティアナに向ける。
「へ?」
「は?」
 唐突なティアナの言葉に驚くフェイトとフェスラ。
「あ、い、いや、私は別に・・・・」
 ギンガはティアナの言葉に反抗するように問題ないと言う。その時お腹が再度鳴る。赤面が加速する。
「・・・・ギン姉、説得力無いよ。」
 溜息一つ。呆れたように呟くスバル。
「・・・・言われてみれば、もうそんな時間か。」
 今自分達がいる喫茶店の近くの電光掲示板に示されている時刻を確認するシン。時刻は既に11時半を過ぎている。昼には少し早いかも知れないが早すぎると言うほどでもない。
 その時、ティアナがシンに目配せ―――と言うよりもシンにしてみると睨みつけているようにしか見えなかったが。その視線に怪訝な顔をするシン。ティアナのアイコンタクトの意味を理解していない。というか睨みつけられているようにしか見えないので叱責されているようにすら感じている。
 ティアナはアイコンタクトを理解していないのが丸分かりのシンに見切りをつけて、行動を推し進める。
「じ、実は今日ってシンが昼を奢ってくれるって話だったんだけど皆どう?」
 二つ目の言葉。その言葉に今度は皆の視線がシンに向く。
「はあ!?」
 シンの素っ頓狂な声が上がる。だが、皆はそんなシンの声が聞こえていないのか、矢継ぎ早に質問が飛び交っていく。
「え、そうだったの、シン君?」
 状況が理解できていないスバルは驚いた表情で。
「シ、シンに奢ってもらえるんですか!?」
 物凄く嬉しそうにギンガは胸の前で腕を組んで、目を輝かせている。こう、ぽわわーんと。恋する乙女のように。

 ギンガ・ナカジマ/脳内会議実況中継。
 円卓を中心に数人の女性が並んでいる。女性の顔は全て同じ顔。それもそのはずだ。
 ここはギンガ・ナカジマの脳内会議。彼女のペルソナ達が語り合う無意識の円卓。
 そこにいる全てはギンガ・ナカジマという存在を共有しつつもその一部でしかないのだ。
「シンが私にご馳走してくれる・・・・・その後はあれなのね。君の瞳に乾杯して今度は君をご馳走になるよとか何とかで夜の隙間をハイドアンドシークして二人の心はノッキングオンザヘブンズドアー!!」
 脳内会議出席者その1。「乙女ギンガ」。ギンガ・ナカジマの乙女ちっくな部分を司るペルソナである。
 最近は壊れ気味である。
「ち、ちょっと貴方ねもうちょっと慎みを持ちなさいよ!?仮にも私でしょ!?」
 眼鏡をかけた知的なギンガ――脳内会議出席者その2。「委員長ギンガ」。ギンガ・ナカジマの潔癖な部分を司るペルソナである。
「何言ってるのよ!シンよ!?あの朴念仁で無頓着でこっちの気持ちにまるで気が付かない鈍感がご馳走してくれるって言うのよ!?『私の為に!!』熱が上がらない訳無いじゃない!?」
 脳内会議出席者その3。「熱血ギンガ」。ギンガ・ナカジマのテンションを司るペルソナである。
「落ち着きなさい二人共!!別にシンは私だけを誘った訳じゃなくて、他にも誘って…」
 委員長ギンガは叫ぶ。いつ暴走するとも知れぬ二人を見るに見かねてだ。だが、そんな委員長の思惑を知ってか知らずか、ぼそっと呟く声があった。
「…シンはきっとシャイだから周りの人達は単なる生き証人でしかないのよつまりこれはきっとシンからの遠回しなプロポーズもう所帯を持つしかないのよお父さんスバル私は今日本当の意味で女になりますああもう乙女じゃなくなっちゃう物理的な意味で!!!」
 物凄い早口言葉でそう話しながら、自分の身体を抱き締めて「うふふふふ」と薄笑いし続けるギンガ。
 脳内会議出席者その4。「ヤンデレギンガ」。時に暴走しがちなギンガの恋愛部分を司るペルソナである。主に暴走させる方向に。
「ば、馬鹿なこと言ってんじゃないわよ!?な、何で私がろ、ろ、ろ」
 ロストバージンというのが恥ずかしいらしい。赤面しながらズレそうになる眼鏡を何度も合わせ直している。
「ロストバージン・・・・・落ちる牡丹。雪原に咲いた赤い薔薇。」
 乙女ギンガは胸の前で手を組むと、陶然とだらしなくにやけた顔で中空を見つめながら詩を歌っている。
「うふふふふふふふ」
 ヤンデレギンガは自分で言った「乙女じゃなくなっちゃう」発言をさぞ気に入ったのか、先ほどからずっとうふふふふと笑い続けている。
「物理的な意味で・・・・」
 熱血ギンガは物理的な意味を思い起こして、ボンっと顔を赤面させて、俯いた。どうやら彼女にはまだ早いらしい。
「だ、だから、もう少し慎み持ちなさいよ!!たかが食事を奢ってもらえるだけよ!?」
 そう言って皆を諌めようとする委員長ギンガ。紅潮した顔で叫んでも説得力は皆無です。
「たかが奢り。されど奢り。千里の道も一歩から・・・・・・これは幸せに至る道の一歩目。」
 しみじみと諭すようにヤンデレギンガは独白する。誰に聞かせるまでもなく。
「し、幸せって・・・・」
 委員長ギンガの返答。
 ヤンデレギンガがその返答に対して真っ向から答える、先ほどのように世界を縮めるほどの早口言葉で。
「そうよ・・・・・奢りから始まり商店街のくじ引きで温泉旅行を当てて二人は旅行に行くのよ温泉と言う非日常の中では男女二人が一緒に泊まればきっと旅館側もサービスしてくれるに違いないわきっとフトンをくっつけたりフトンの近くにティッシュがあったり、枕の裏には「Yes or No」とか書いてあるのよ!!」
 もはやヤンデレというよりも妄想ギンガさんである。しかも発想が古い。オッサンとかオバサンの領域である。そして、その言葉を聞いた瞬間、その場にいた三人のペルソナが同時に上を向いた。思い描く。その光景を。
『・・・・・・』
 その光景を思い浮かべる。瞬間、三人が三人とも鼻を押さえる。その手の隙間から漏れ出る赤い雫―――鼻血。
「・・・・どう?見えた?」
 三人はその瞬間、ヤンデレギンガに親指を立ててプルプルと震える拳を突きつけた。
 それはいわゆる英語で言うと「GJ」の証である。
 迸る情動。震え上がる情熱。結論は一つのみ。その震える親指が示す意味のみである。

 同じ瞬間、ギンガと似て非なる思考をしていた女性がいた。言わずと知れたフェイト・T・ハラオウンである。
「ほ、ほんとに!?」
 フェイトも同じくテーブルに手を突いて目を輝かせている。こう、きらきらっと。無邪気な子供のように。

 フェイト・T・ハラオウン/脳内会議実況中継。
 広大な金色の草原。そこにいる無数の金髪の女性達。
「シンが奢ってくれるって―――!!!!」
「いやったあああああ!!!」
「やったああああああ!!!」
「うわあああああああい!!!!」
 それはフェイト・T・ハラオウンだった。
 無限――――無限と言う数が数え切れないほどに多いと言うものを言うのであればこれは無限であろう。
 子供のフェイトがいた。
 大人のフェイトがいた。
 オバサンのフェイトがいた。
 女子高生のフェイトがいた。
 キャバ嬢のフェイトがいた。
 小人のようなフェイトがいた。
 貧乳のフェイトがいた。
 巨乳のフェイトがいた。
 数限りないフェイトがいた。
 草原を埋め尽くす金色の髪。
 見えていたのは金色の草原ではなく、金色の髪の群れだ。
 その全てがシンに奢ってもらうと言う一事に歓喜している。
 数限りない無限のペルソナが狂喜乱舞しているのだ。
「わーい!!!」
「わーい!!!」
「わーい!!!」
「わーい!!!」
「わーい!!!」
 もはや会議っていうかサバトである。魔女もビックリである。
 無限のフェイトが手を繋いで踊っている。
 マイムマイムを踊るように皆で「シーン!!」「シーン!!」と繰り返しながらスタンディングオベーションを繰り返している。
 その光景は綺麗とか可愛いとか通り越して、ぶっちゃけホラーです。見ている人間などいない―――だが、もし見た人間がいたらこう思うだろう。ゾンビに追われる気持ちってこんな感じなのかなと。

「・・・・・それならさ、私いいとこ知ってるんだけど、どう?」
 その時フェスラの口が開いた。ティアナに目配せする。どうやら彼女にはティアナがやろうとしていることが見透かされているようだ。その視線に目で合図するティアナ。その提案に乗る確認だ。
「いや、待て!!俺は別に一言も奢るなんて・・・・」
 否定するシン。予想外の状況―――いつの間にか自分が奢ることになっていることに驚きと共にうろたえている。ティアナがクロスミラージュを操作し、シンにだけ秘匿通信で念話を開始する。
『いいから、アンタは言うこと聞きなさい!!』
「っ!!?」
 怒鳴り声。シンの脳裏にティアナの叫びが木霊する。思わず黙り込むシン。その間隙を縫って、ティアナがフェスラに質問する。
「いいところってどんなところ?」
「うん、安くて美味しい定食屋。結構人数多いからそういうところの方がいいと思うんだけど・・・どう?」
 フェスラが皆―――無論、シンを除いた女性陣のみへ―――に視線を向ける。
「わ、私はシンに奢ってもらえるならどこでもいいです!」
「わ、私も!!私も!!」
「私も奢ってもらえるならどこでもいいよー!!」
 否定は無い。意見は肯定のみ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!そんな話は一言も・・・・」
 否定するシンの声。その声に反応して皆の視線が彼に集中する。
 思わずその視線に後ずさりするシン。
「く・・・。」
 元来、他人の頼みを断らないシンにとってその視線は強烈を通り越して凶悪だった。
 1秒。沈黙。視線は動かない。
 2秒。沈黙。視線は動かない。
 3秒。沈黙。視線に奢ってくれないのかという不安が混じり出す―――主にギンガとフェイトの瞳に。
 4秒。沈黙。その瞳を見てシンが自分の財布を開き、溜息一つ。財布を閉じる。そして、その口が開いた。観念したように肩を落とす。
「・・・・・そこ、教えてくれ。」
 財布の中身は結構危険だった。思えばATMで金を降ろし忘れていたからだ。
 朱い瞳の異邦人シン・アスカ。彼は案外庶民派だった。少なくとも財布の中身を気にして奢ることを渋るくらいには。

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